「あり方が大事」「マインドが整えば結果はついてくる」。
ビジネス発信の世界では、こういう言葉が本当によく語られます。
聞こえはいい。
耳に残る。
実際、ある程度の真実も含んでいます。
ただ、この言葉を真に受けすぎると、目標達成からどんどん遠ざかっていく現象が起きます。
なぜなら、世の中はそもそも構造と運でできているからです。
本記事では、なぜ「あり方」より「やり方」が先にくるのか、世の中の仕組みをどう捉えれば目標達成の確率が上がるのか、そしてスタンフォード大学クランボルツ教授が提唱した計画的偶発性理論という考え方から、運を引き寄せるための5つの行動特性を整理します。
売上を作っているのは「あり方」ではなく「構造」
まず、誤解のないように言っておきたいのですが、あり方が無意味だと言いたいわけではありません。
あり方は、ある程度の構造が整った後で、最後の伸びしろを決める要素です。
ただ、ビジネス界隈で「あり方が大事」が連呼される背景には、ひとつの落とし穴があります。
それは、あり方を語っている時、人はやり方の不備から目を背けやすいということです。
「集客できないのは、私のあり方が足りないからかな」
「成約できないのは、私の覚悟が足りないからかな」
このループに入った瞬間、本当に直すべきだった構造の問題が、ずっと放置されます。
売上が上がらない理由は、たいてい、もっと手前にあります。
ターゲットがずれている。
商品の提供価値が言語化されていない。
ファネルの設計が壊れている。
発信の入口と出口が一致していない。
これらは全部「やり方」の問題です。
やり方が間違っているのに、あり方で何とかしようとしても、構造的に到達できません。
時給1000円で月収100万円は、どうあっても達成できない
少し極端な例え話をします。
時給1000円のアルバイトをしている人がいるとします。
その人の目標は、月収100万円です。
仮にこの人が1日も休まず、寝ずに、24時間労働を続けたとしましょう。
1日24時間 × 30日 = 720時間。
720時間 × 1000円 = 72万円。
これが、構造上の限界値です。
24時間労働を1ヶ月続けてようやく72万円。
100万円には絶対に届きません。
ここで、その人が親友だったとして、こう言ってきたら、なんと返しますか。
「今月も目標達成できなかった。私のあり方が、まだ足りないんだ」
たぶん、こう答えるはずです。
「あり方の前に、時給1000円で月100万は無理だよ。仕事を変えた方がいい」
これは笑い話のようですが、ビジネスの現場でまったく同じことが起きています。
商品単価、ターゲット、集客動線、提供価値。
構造的に届かないところに目標を置いて、あり方で何とかしようとする。
努力したぶんだけ、自分を責める要素が増えていく。
でも、構造を変えない限り、結果は変わりません。
だから順序が大事なんです。
まず構造を見る。
構造を整える。
その上で、最後の数パーセントをあり方で押し上げる。
これが、現実的に成果が出る順序です。
世の中は「構造」と「運」でできている
少し抽象度を上げます。
僕は、世の中で起きている結果のほとんどは、構造と運でできていると考えています。
- 構造:やり方・計画・設計・仕組み
- 運:自分の意思では計画できなかった偶然の出来事
成功している経営者の話を聞くと、
面白いくらい「運が良かった」という話が出てきます。
「あの時、たまたまあの人に会ったことが転機だった」
「たまたま読んだ本で考え方が変わった」
「あの業界に最初に入ったのが、結果的に良かった」
これ、全部「運」の話です。
ただ、その「運」を活かせる構造を、その人は事前に作っていた。
人に会える場所に行っていた。
本を読む習慣があった。
業界に飛び込む決断をしていた。
だから、運が来た時に拾えた。
構造があったからこそ、運が結果になった。
逆に言うと、構造がない状態でいくら運を待っても、運は通り過ぎていきます。
あり方だけを磨いても、構造がなければ運は形になりません。
成果は、構造と運の掛け算で決まります。
キャリアの8割は、計画されなかった出来事から生まれる
ここで紹介したいのが、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)です。
クランボルツ教授は、ビジネスで成功したアメリカ人数百人のキャリアを調査し、ある結論にたどり着きました。
個人のキャリアの8割は、本人が事前に計画していなかった偶発的な出来事によって決定されている。
これは、キャリア理論の世界ではかなり大きな話でした。
それまでのキャリア論は、「目標を立てて、計画的にステップを踏んでいく」という設計図思考が主流でした。
でも、実際に成功者の人生を遡ると、設計図通りに進んだ人はほとんどいなかった。
むしろ、偶然出会った人、偶然引き受けた仕事、偶然のトラブルが、結果的に人生を作っていた。
ここで重要なのは、クランボルツ教授がこの理論で言いたかったのは、
「だから計画しなくていい」ではないということです。
伝えたかったのは、こうです。
キャリアは偶然に左右される。だからこそ、その偶然を呼び込み、活かせる行動を取り続けることが重要だ。
これが「計画的偶発性」という名前の意味です。
偶然そのものは計画できません。
でも、偶然が起きる確率は、行動によって上げられます。
そして、起きた偶然をチャンスに変える受け取り方も、訓練できます。
運を「来るかな、来ないかな」と待つのではなく、運を引き寄せる構造を自分の生活に組み込む。
これが、計画的偶発性理論の核です。
偶然を呼び込む5つの行動特性
クランボルツ教授は、偶然をキャリアの好機に変えやすい人に共通する5つの行動特性を整理しています。
これは、ビジネスをやっている人にとっても非常に実用的です。
1. 好奇心(Curiosity)
新しい学習機会、新しい人、新しい領域に対して興味を持ち続ける姿勢です。
「興味がないから知らない」「専門外だから読まない」を繰り返している人の周りに、偶然は起きません。
逆に、関係なさそうな分野の本を読み、知らない業界の人と話し、新しいツールを触っている人のところには、自然と情報も人も集まってきます。
2. 持続性(Persistence)
失敗や挫折があっても、努力を続ける姿勢です。
偶然は、続けている人のところに起きます。
1回試して止めた人のところには、運が訪れる前にゲームが終わってしまいます。
「うまくいかなかったから別の方法を試す」を続けられる人は、確率の数字を積み重ねていくことになります。
3. 楽観性(Optimism)
新しい機会は実現する、自分はそれを掴める、と前向きに捉える姿勢です。
ここで言う楽観性は、根拠のない自信ではありません。
「やってみないとわからないなら、やってみる側に賭ける」という姿勢のことです。
悲観的にすべての可能性を潰す人のもとに、偶然のチャンスは形になりません。
4. 柔軟性(Flexibility)
姿勢・態度・行動を、状況に応じて変えられる力です。
「私はこういうやり方しかしない」と固定しすぎる人は、偶然の機会が来ても受け取れません。
業界が変わる、商品が変わる、お客様が変わる、自分が変わる。
変化に合わせて自分のスタイルを微調整できる人だけが、長く成果を出し続けられます。
5. 冒険心(Risk Taking)
結果が不確実な状況でも、行動を起こす姿勢です。
すべての保証が揃ってから動こうとする人のところに、偶然は来ません。
なぜなら、新しい機会は常に不確実だからです。
不確実さを受け入れて踏み出した人だけが、偶然を経験できます。
この5つは、どれもいわゆる「あり方」っぽい言葉に聞こえるかもしれません。
ただ、クランボルツ教授がすごいのは、これらをすべて行動特性として定義したことです。
性格ではない。
気質でもない。
意識して取れる行動の癖です。
つまり、訓練できるということです。
成功者が「運が良かった」と言う本当の意味
成功した経営者にインタビューすると、ほぼ全員がこう答えます。
「運が良かっただけです」
謙遜だと受け取る人も多いですが、僕はこれは半分本気だと思っています。
その人のキャリアを作った重要な分岐点は、結果論として「あれが効いた」と言えるだけで、事前に計画できたものではなかった。
その意味で、本人にとってもあれは「運だった」と振り返るしかない。
ただ、ここに大事な前提があります。
その「運」が結果になったのは、その人が、運が起きる場所に居続けたからです。
運が来た時に受け取る姿勢を持っていたからです。
受け取った後、それを商品やキャリアに翻訳する行動をすぐに取ったからです。
つまり、運の前後にある「構造」と「行動」を、その人はちゃんと積み上げていた。
だから僕は、「運が良かっただけ」という言葉を、こう翻訳して聞くようにしています。
「事前に計画した結果ではないが、自分が積み上げた行動の上に、ちゃんと拾える運が乗った」
これが、成功している人の本当の構造だと思います。
まず目的を決める。次に計画する。そして行動し続ける
ここまで読んでくれた方に、改めて伝えたい順序があります。
- まず目的を決める
何のために、誰のために、どこまで届きたいのか。
時給1000円の例のように、構造的に届かない目標を立てると、その先のすべてが歪みます。
目的が決まると、必要な構造が見えてきます。 - 達成し得る計画を立てる
目的に対して、構造上届く道を設計します。
ここで「あり方」を語っている時間があるなら、ターゲット・商品・単価・動線を見直すべきです。 - 行動し続ける
計画通りに進む保証はありません。
そして、最終的な結果を作るのは、計画ではなく偶然です。
だから、偶然が起きる確率を上げるための行動を、止めずに続けます。 - 5つの特性を意識する
好奇心、持続性、楽観性、柔軟性、冒険心。
この5つを行動の質に組み込むことで、運の受け取り効率が上がります。 - 起きた偶然を翻訳する
偶然はチャンスのまま消えていきます。
受け取って、自分の構造に組み込んだ瞬間に、それが結果になります。
あり方は、この一連の構造が動いている人だけに、追加効果を生みます。
構造が動いていない人がいくらあり方を磨いても、出口がないので結果になりません。
あり方を語る前に、構造を整える勇気を
「あり方が大事」という言葉は、本当は最後の最後に出てくる話です。
構造を整えた。
計画通りに動いた。
偶然が起きるところに居続けた。
来た偶然を受け取った。
それでもまだ届かない最後の数パーセントを、あり方で押し上げる。
この順序を守って初めて、あり方は機能します。
逆に言うと、構造を整える前に「あり方が足りない」と自分を責めている人は、自分を傷つけているだけです。
直すべきは、まずやり方です。
構造です。
計画です。
行動です。
その上で、偶然を呼び込む5つの行動特性を続けていく。
これが、目標達成の確率を最大化する一番素直な道だと思っています。
行動の量を増やせと言いたいわけではありません。
行動の質と方向を、確率が上がる方向に向け続けてほしいのです。
このテーマは、自分の責任で人生を動かす感覚にも近いところがあります。
あわせて他責にできるくらい、自己責任を果たせ|講座を成果に変える一人起業家の覚悟も読んでみてください。
行動量と教わり方の話につながります。
「やる側」と「止まる側」を分けるものについては、「わからない」「苦手」にどう向き合うかで、人生は分岐するでも整理しています。
計画的偶発性で言う「楽観性」や「冒険心」の話と地続きです。
まとめ
世の中は、構造と運でできています。
構造は計画できます。
運は計画できません。
でも、運が起きる確率は、行動の質で上げられます。
「あり方」だけを磨いても、構造が壊れていれば結果になりません。
逆に、構造を整えて、計画的偶発性の5つの特性を行動に組み込むだけで、結果が出始める人はかなり多いです。
僕自身、副業で6年半うまくいかなかった時期は、ずっとあり方の話をしていた気がします。
学べば学ぶほど「自分の覚悟が足りない」と思い込んでいた。
ただ、結果が変わり始めたのは、あり方の話を一度横に置いて、構造の話に集中した時でした。
ターゲットを変えた。
商品の出し方を変えた。
動線を整えた。
偶然が起きそうな場所に、自分から行くようにした。
そうすると、偶然出会った人、偶然引き受けた仕事、偶然のトラブルが、結果としてキャリアを動かしてくれました。
運は「待つもの」ではなく、「呼び込む構造を作るもの」です。
このあたりの話を、自分の事業構造に実際に落とし込むためのワーク版を、Noah|実践ナレッジライブラリの自己経営編に用意しました。
構造の自己点検、5つの行動特性の自己診断、今週の1アクション宣言まで、順番に進められる実践編です。
「構造の整え方や自己診断を具体的にやってみたい」と感じた方は、「運の受け取り力」を点検する自己経営ワーク──計画的偶発性理論を毎日の行動に落とす実践編も覗いてみてください。
最後にもう一度だけ言わせてください。
あり方の前に、構造を整える。
構造の上で、偶然を呼び込む行動を続ける。
来た偶然を、ちゃんと受け取る。
この順序を守るだけで、目標達成の確率は確実に上がります。
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