ルールを書き足すほど、AIが賢くなるという誤解
715行のAGENTS.mdが、AIの動きを鈍らせていた話
AGENTS.mdを715行から149行まで圧縮した実例から、AIに読ませる指示をどう整理すれば実務で使いやすくなるのかを解説します。
完璧なAI環境を構築しようと思って、僕はAGENTS.mdを育てていました。
「このルールも覚えておいて」 「この作業ではこのファイルを見て」 「この表記は間違えないで」 「この操作は勝手にやらないで」
そうやって少しずつ書き足していった結果、気づけばAGENTS.mdは715行に。
正直、最初は大満足でした。
自分専用のAI環境が育ってきた感覚があったし、これだけ細かく書いておけば、AIもかなり賢く動いてくれるはずだと思っていました。
でも、完全に間違えていました。
大量の指示書が、むしろAIの動きを鈍らせていたんです。
ただルールを増やせばいいわけではありません。
最大効率を作るためには、「何を書くか」以上に「どこに置くか」を設計する必要がありました。
今回は、僕自身のAGENTS.mdを715行から149行まで圧縮した実例をもとに、AIに読ませる指示をどう整理すれば、実務で使いやすくなるのかを解説します。
AIにルールを渡すほど、安心感は増える
AIを仕事で使い込んでいる人ほど、最初はこう考えやすいと思います。
「細かく指示すればするほど、AIは自分の意図を理解してくれる」
実際、これは半分正しいです。
AIに何も前提を渡さなければ、毎回こちらが説明しないといけません。
返答の口調、作業の進め方、読んでほしい資料、触ってはいけないファイル、外部公開の確認ルール。
こういうものは、最初に渡しておいた方が仕事は進みます。
だから僕も、必要なルールをどんどんAGENTS.mdに書き足していました。
AGENTS.mdというのは、Codexに対して「この作業場では、この前提で動いてください」と伝える入口のようなファイルです。
Claude CodeでいうCLAUDE.mdに近いものだと思ってもらうと分かりやすいです。
ここにルールを書いておけば、AIが毎回その前提を読んで動いてくれる。
そう思うと、かなり便利なんですよね。
たとえば僕の場合は、こんなルールを書いていました。
- 返答は原則日本語
- 音声入力の誤変換を自然に補正する
- 特定のパスワードフォルダは読まない
- 削除依頼でも物理削除せず退避する
- GitHub連携の作業ではPR作成まで進める
- 本番反映やデプロイは勝手にやらない
- 発信記事を書く時は口調やペルソナを確認する
- AI社員ごとに役割を分ける
- 長時間処理で同じ失敗を繰り返さない
どれも大事です。
一つひとつを見ると、別に悪いルールではありません。
でも、問題はそこではありませんでした。
問題は、ルールの量ではなく置き場所だった
僕がやっていた失敗は、必要なルールを全部「入口」に置いていたことです。
毎回必ず読むべき鉄則と、特定の作業の時だけ読めばいい手順が、同じ場所に混ざっていました。
たとえば、発信記事を書く時の口調ルールは大事です。
でも、開発作業をしている時に毎回読む必要はありません。
音声入力の誤変換辞書も大事です。
でも、画像生成やGit操作をしている時に毎回読む必要はありません。
パス一覧や過去の移動履歴も、必要な時には役立ちます。
でも、AIが毎回最初から抱える情報ではありません。
この区別ができていなかったんです。
厨房でたとえるなら、「手を洗う」は壁に貼るべきルールです。
でも、「パスタの作り方」は、パスタを作る時だけ見ればいい。
ここまでは、例え話として分かりやすいと思います。
ただ、AIに作業させる実務で見るなら、これは「全タスク共通の安全ルール」と「作業別の実行手順」の違いです。
たとえば、AIにWebサイトの修正を頼む時は、
- ユーザーが触っている差分を勝手に戻さない
- 本番反映やデプロイは勝手に進めない
- 作業が終わったら検証して、commitやPRまで整理する
こういうルールは毎回読ませた方がいい。
一方で、
- Noahの記事同期手順
- Threads投稿の文体ルール
- 画像生成のプロンプト設計
- 音声入力の固有名詞辞書
- 特定のAI社員だけが使う作業手順
こういうものは、その作業が来た時だけ読めれば十分です。
僕のAGENTS.mdは、この共通ルールと作業別手順が混ざっていました。
つまり、Reactコンポーネントを修正する時にも、記事執筆の口調ルールや音声入力の辞書まで毎回視界に入る状態になっていたんです。
結果として、AIは毎回大量の前提を読まされることになっていました。
しかも、ルールが長くなるほど、矛盾も見つかりにくくなります。
今回見直した時も、GitHub運用のルールにズレがありました。
ある場所では「明示依頼なしにpushやPRはしない」と読める。
別の場所では「レビュー前提ならpushやPR作成まで進める」と読める。
僕の実務では、基本的にPR作成までは進めてほしい。
でも、mergeや本番反映は勝手にやってほしくない。
このように、本来は一文で済むルールが、長い指示書の中で分散していたんです。
715行を149行に圧縮してやったこと
今回やったことは、単純にルールを削ったわけではありません。
「毎回読むべきもの」と「必要な時だけ読むもの」を分けました。
AGENTS.mdに残したのは、常に守るべきルールだけです。
たとえば、
- 返答の基本言語
- 読んではいけないフォルダ
- 削除せず退避するルール
- GitHub運用の方針
- 本番反映の確認ルール
- 依頼ごとの読み先
- エラーが続いた時に止まる基準
こういうものです。
一方で、毎回読む必要がないものは別ファイルに移しました。
発信の口調やSNSコンセプトは、発信ガイドへ。
音声入力の誤変換は、固有名詞辞書へ。
パス一覧や移動履歴は、パス索引へ。
繰り返し作業の手順は、skillへ。
AI社員ごとの内輪の手順は、それぞれのAI社員フォルダへ。
こうして、AGENTS.mdは715行から149行になりました。
大事なのは、情報を捨てたわけではないことです。
必要な情報は残しています。
ただし、置き場所を変えました。
AIが毎回全部を読むのではなく、必要な時に必要な場所へ取りに行けるようにしたんです。
入口は薄く、参照先は具体的にする
この整理をして分かったのは、AIにとって大事なのは「全部覚えていること」ではないということです。
大事なのは、必要な情報へ迷わず辿り着けることです。
入口が重すぎると、AIは最初から大量の情報を抱えます。
すると、依頼の本筋と関係ないルールまで視界に入ります。
それが続くと、AIの判断が遅くなったり、重要なルールが埋もれたりします。
だから、入口は薄くていいんです。
AGENTS.mdやCLAUDE.mdに置くべきなのは、全部の説明ではありません。
入口に置くべきなのは、
- 何を絶対守るか
- 依頼の種類ごとに何を読むか
- 何をしてはいけないか
この3つです。
たとえば、AIに開発作業を頼むなら、まず必要なのはGit運用、本番反映の制限、対象プロジェクトのAGENTS.md、触るファイル周辺の実装ルールです。
ここで、note記事の文体ルールやThreads投稿の勝ちパターンまで毎回読ませる必要はありません。
逆に、Noah無料ライブラリの記事を書くなら、開発の細かいビルド手順よりも、Noah記事の設計ルール、過去記事のトーン、公開前チェック、Supermemoryを参照するかどうかの判断が重要になります。
同じAIでも、開発を頼む時と記事を書く時では、必要な前提が違います。
だから、AGENTS.mdには「どの種類の依頼なら、どのファイルを読むか」だけを書いておく。
詳細は、それぞれの場所へ分けます。
- 発信の口調やペルソナは、発信ガイドや記事作成skillへ
- Webデザインの確認観点は、デザインレビューskillへ
- Noah記事の公開手順は、Noahの運用仕様や同期スクリプトへ
- パス一覧や移動履歴は、path-indexへ
- 音声入力の誤変換は、固有名詞辞書へ
- AI社員ごとの手順は、それぞれの人格・部署フォルダへ
こうやって参照先を分けると、AIは「今の依頼に必要な情報」だけを取りに行きやすくなります。
結果として、AIが作業の本筋に集中しやすくなり、余計なルールに引っ張られにくくなります。
あなたのAI環境でも、まず見るべきポイント
もしCodexやClaude Codeを使っていて、
「毎回同じ注意をしている」 「ルールを書いたのにAIが守らない」 「AIが作業の途中で迷いやすい」 「AGENTS.mdやCLAUDE.mdが長くなりすぎている」
と感じているなら、AIの性能を疑う前に、指示書の置き場所を見直してみてください。
見るべきポイントは、かなりシンプルです。
まず、AGENTS.mdやCLAUDE.mdに「毎回読む必要のないもの」が混ざっていないか。
次に、同じルールが別の場所で違う表現になっていないか。
そして、特定の作業だけで使う手順をskillや別ファイルに分けられないか。
この3つを見るだけでも、かなり整理できます。
特に危ないのは、良かれと思ってルールを足し続けることです。
ルールを増やすほどAIが賢くなる。
これは半分正しいけれど、半分は誤解です。
正確には、AIは「適切な場所に置かれたルール」によって動きやすくなります。
逆に、置き場所が悪いルールは、AIの動きを鈍らせます。
小さな確認ワーク
あなたのAI環境でも、次の3つを確認してみてください。
1つ目。
AGENTS.mdやCLAUDE.mdは、いま何行ありますか?
もちろん行数だけで良し悪しは決まりません。
でも、300行、500行、700行と増えているなら、一度見直す価値があります。
2つ目。
その中に、特定の作業の時だけ使う手順が混ざっていませんか?
たとえば、記事作成、デザインレビュー、文字起こし、営業準備、Git運用、音声入力辞書。
これらが全部入口に入っているなら、分けられる可能性があります。
3つ目。
新しいルールを足す時に、「どこへ置くか」の判断基準がありますか?
これがないと、また同じように入口ファイルが膨らんでいきます。
僕は今回、追加ルールの置き場所も決めました。
全作業で守るものはAGENTS.md。
発信の口調や思想は発信ガイド。
音声入力の誤変換は固有名詞辞書。
繰り返し作業の手順はskill。
AI社員だけが使う手順は、そのAI社員のフォルダ。
パス一覧や移動履歴は索引ファイル。
このように決めておくと、ルールを追加する時に迷いにくくなります。
自分の場合は、何をどこに置くべきか
ここが一番難しいところです。
AI環境は、人によってかなり違います。
Codex中心の人もいれば、Claude Code中心の人もいます。
Obsidianで管理している人もいれば、GitHubのリポジトリだけで完結している人もいます。
だから、「このファイル名にすれば絶対正解」という話ではありません。
大事なのは、役割で分けることです。
毎回守るルール。
特定作業の手順。
人間向けの説明。
過去ログ。
参照用の辞書。
この役割が混ざらなければ、AIの作業場はかなり整います。
そして、自分だけでは判断しにくい時は、AI自身に聞けばいいです。
AIに「この指示書、太りすぎていない?」と聞く。
「毎回読むべきものと、必要な時だけ読むものに分けて」と頼む。
これだけでも、かなり改善案が出てきます。
そのまま使える確認プロンプト
最後に、僕が今回やった整理をあなたの環境でも試せるように、プロンプトを置いておきます。
CodexでもClaude Codeでも、あなたの作業場にあるAGENTS.mdやCLAUDE.mdを対象にして使えます。
今の作業環境にある AGENTS.md / CLAUDE.md / skill / README などの指示ファイルを確認して、AIが毎回読むべき「常時ルール」と、必要な時だけ読むべき「参照ルール」に分けてください。
特に以下を見てください。
1. AGENTS.md または CLAUDE.md が肥大化していないか
2. 毎回読む必要のない口調ルール、パス一覧、移動履歴、媒体別ルール、作業手順が入口ファイルに混ざっていないか
3. 矛盾しているルールがないか
4. 特定の作業だけで使う手順を skill や別ファイルに分けられないか
5. 新しいルールを追加する時の置き場所ルールを作れるか
出力は次の形でお願いします。
- 現状の問題点
- AGENTS.md / CLAUDE.md に残すべきもの
- 別ファイルへ移すべきもの
- 移動先の候補
- ルール肥大化を防ぐための配置ポリシー
- 実際に修正する場合の手順
可能なら、入口ファイルは200行前後を目安に圧縮してください。
ただし、重要な事故防止ルールは削らず、必要な場所へ移してください。
これを使って、あなたのCodexやClaude Codeにも聞いてみてください。
AIが言うことを聞かない時、AIの性能を疑う前に、まずは読ませ方を整える。
それだけで、仕事はかなり進みやすくなるはずです。
もし自分の環境でどこから整理すればいいか分からない場合は、AGENTS.mdやCLAUDE.mdだけでなく、skill、README、日々の作業ログまで含めて一度棚卸ししてみてください。
見るべきなのは、「何を入口に残し、何を必要な時だけ読む場所へ移すか」という点です。
AIに何を覚えさせるかより、AIが迷わず取りに行ける構造を作る。
ここが整うと、日々の作業のストレスはかなり減ります。