交流会で何人とも話した。
名刺もSNSも交換した。
帰る時には「今日はいい出会いがあった」と思えたのに、その後は誰からも連絡が来ない。
これは、会話が下手だったからとは限りません。
相手の記憶に「感じのよかった人」としては残っていても、誰かを紹介する時に思い出せる人にはなっていないことがあります。
仕事と相手の適合や、紹介する機会がまだ訪れていないことも、別の要因です。
紹介は、その場で好かれたら起きるものではありません。
相手が後日、知人の悩みを聞いた時に、「あの人なら一度話すとよさそう」と具体的に結びつけられた時に生まれます。
交流会の目的を、名刺の枚数やその場の手応えだけで置くと、この違いが見えなくなります。
必要なのは、会場の前から会場の後まで、相手があなたを思い出しやすい関係を作ることです。
交流会で起きる「いい人だったけれど、誰だっけ」
仮に、地域の事業者交流会で二十人と名刺交換した人がいるとします。
会話はどれも悪くありませんでした。
相手の仕事にも興味を持ち、自分のサービスも説明しました。
一週間後、ある参加者が「採用がうまくいかなくて困っている経営者」を知人から相談されました。
その時、その人の記憶に残るのは、採用支援をしている人でしょうか。
それとも「いろいろなことをやっている、感じのいい人」でしょうか。
後者では、紹介の言葉が作れません。
紹介する側は、自分の信頼も使います。
だから、相手が誰に何を相談できる人なのかが分からないと、軽々しくつなげられないのです。
紹介につながる人は、強く営業した人ではありません。
相手があとから説明できる程度に、仕事と人柄の輪郭を残した人です。
会場へ行く前に、覚えてほしい役割を一つ決める
交流会へ行く時、「仕事につながりそうな人に会う」とだけ決めると、会話ごとに自己紹介が散らばります。
相手の反応に合わせることは大切ですが、何の人として覚えてほしいかまで変える必要はありません。
たとえば、複数のサービスを持っている人でも、その日の会で残す役割を一つに絞れます。
- 社内にある専門性を、外へ伝わる言葉に整理する人
- 初回相談で、商品や導線の詰まりを見立てる人
- 研修の後に、現場で行動が続く仕組みを一緒に作る人
肩書きを格好よくするためではありません。
相手が、どんな相談をされた時にあなたを思い出せばよいかを分かるようにするためです。
「何でもできます」は、話している時には頼もしく聞こえます。
しかし、紹介する側には難しい言葉です。
誰に何をつなげるかを想像できないからです。
相手の話を聞くと、紹介の精度が上がる
交流会で自分の説明を急ぐと、相手の名前と職種しか残りません。
これでは、後日こちらから誰かを紹介することも難しくなります。
まずは、相手の話を聞きます。
なぜ今の仕事をしているのか。
どんな人の役に立ちたいのか。
最近、どんな場面で手が止まりやすいのか。
全部を質問し切る必要はありません。
一つでも具体的な話を聞ければ、相手を職種ではなく、仕事の背景と一緒に覚えられます。
この姿勢は、話を聞いてもらえたという印象にもつながります。
ただし、聞くことを紹介を得るための技術にしてしまうと、会話はすぐに固くなります。
その人の仕事を理解したいという関心が先にあって、結果として紹介の精度が上がるくらいが自然です。
その場で売らず、紹介の言葉を残す
交流会で価格や契約の話を急ぐと、相手は「営業された」と感じやすくなります。
反対に、自分の仕事をまったく話さなければ、相手は何を紹介すればいいか分かりません。
ここで必要なのは、サービス一覧ではなく、紹介の場面が浮かぶ一文です。
たとえば、「SNS運用をしています」よりも、「投稿はしているのに、相談につながらない事業者の導線を一緒に整理しています」の方が、相手は誰かの顔を思い浮かべやすくなります。
この一文は、相手の悩みを決めつけるためのものではありません。
「そういう場面なら、この人に話を聞く意味がありそうだ」と思い出してもらうための手がかりです。
会話の最後は、依頼を迫るより、「もし周りに同じように困っている方がいたら、気軽に声をかけてください」くらいで余白を残します。
紹介をお願いする場合も、誰でもいいからつないでほしいという頼み方にはしません。
相手が安心して思い出せる範囲を残す方が、関係は長く続きます。
会場を出た後に、関係を一度つなぎ直す
交流会で会った後は、記憶が新しいうちにお礼を伝えると、会話が一度つながります。
目安は翌日までです。
遅れてしまったから連絡してはいけないわけではありませんが、思い出を共有できるうちの方が、短い言葉でも届きやすくなります。
メッセージは、営業文にしなくて構いません。
「〇〇のお話が印象に残りました」
「教えていただいた取り組みを、もう少し知りたくなりました」
その日の会話に触れた一言があれば十分です。
連絡先やSNSを交換していない場合は、相手の意思を置き去りにして探し出す必要はありません。
次に会う機会があれば、改めて声をかければよいこともあります。
その後は、相手の投稿を見て反応したり、自分の発信で仕事の考え方を伝えたりします。
ここでも目的は、毎回売り込むことではありません。
会った時の会話と、あなたが何を大切に仕事をしているかを、少しずつつなげることです。
紹介が起きない時は、人数より記憶を見直す
交流会へ何度行っても紹介が起きない時、参加数を増やしたくなります。
けれど先に見直したいのは、次の三つです。
- 自分が何の人として記憶されているか
- 相手の仕事や困りごとを、職種以上に覚えられているか
- 会った後に、相手が無理なく思い出せる接点を残しているか
この三つが整うと、交流会は一度きりの名刺交換の場ではなくなります。
すぐに紹介が起きなくても、誰かの悩みとあなたの仕事が結びつく余地が残ります。
どの人に、何を覚えてもらえば紹介につながるのかを整理したい時は、交流会での会話と、その後の動きを一度書き出してみてください。
自分の説明、相手に聞いたこと、次に接点を作った方法を分けて見ると、直す場所が見えてきます。

