打ち合わせの場では、手応えがあった。
担当者も何度もうなずき、「それは今まさに困っているところです」と言ってくれた。
それなのに、提案書を送った後は「社内で検討します」から返事が止まる。
この時、提案した側は「価格が高かったのかもしれない」「もっと実績を入れるべきだった」と考えがちです。
もちろん、予算や優先順位の事情で、今は進められない案件もあります。
ただ、担当者が前向きだったのに社内で止まる時は、社内で説明するための材料が足りていないことがあります。
担当者は、あなたとの会話では提案の価値を理解できたかもしれません。
でも、上司や関係部署へ持ち帰った瞬間、その人は「提案を聞く側」から「提案を説明する側」に変わります。
その切り替わりを支えられる資料になっているかが、法人提案では大きな分かれ目です。
担当者の「いいですね」と、社内の意思決定は別の仕事
打ち合わせで好感触だった担当者は、あなたの話を聞きながら、自社の課題と重ねています。
「たしかに、今のままでは困る」
「この人なら状況を整理してくれそうだ」
そんな感覚を持ってくれていることもあります。
けれど社内へ戻ると、担当者は違う問いに答えなければなりません。
- なぜ今、この提案が必要なのか
- 今のやり方のままでは、何が起きるのか
- どの部署の、誰に、どんな負担や変化があるのか
- 何をどこまで任せるのか
- 費用をかけて、どんな状態を目指すのか
あなたが打ち合わせで丁寧に話した内容を、担当者が全部覚えているとは限りません。
また、担当者にとっては納得できる話でも、社内の別の人にとっては初めて聞く話です。
提案書がサービスの説明だけになっていると、担当者は、その必要性を自分の言葉で補わなければなりません。
すると、あなたが見立てた課題と、担当者が社内で伝えた内容がずれていくことがあります。
結果として、「よさそうだけれど、今決める理由が分からない提案」になってしまうのです。
サービスの説明だけでは、必要性まで伝わらない
「SNS運用を支援します」
「採用広報を整えます」
「営業研修を実施します」
こうした言葉で、提供する内容は伝わります。
ただ、社内で判断する人には、もう一段知りたいことがあります。
それによって、自社の何が変わるのかです。
たとえば、架空のA社で考えてみます。
A社はSNSの更新を続けていますが、問い合わせにつながっていません。
担当者は投稿の企画に毎週時間を使っていて、他の仕事との両立にも困っています。
そこで「SNS運用を代行します」と提案したら、どうでしょうか。
担当者は「助かる」と感じるかもしれません。
でも、上司から見れば「今まで社内でやっていた投稿を、外注する話」に見える可能性があります。
そうなると、「外注するほど大変なの?」「投稿を減らせばいいのでは?」という話にもなります。
担当者が感じていた困りごとと、会社として費用をかける理由が、まだつながっていないからです。
一方、打ち合わせで状況を確かめ、次のように整理できたらどうでしょうか。
- 更新は続いているが、誰に何を伝え、次にどこへ進んでもらうかが定まっていない
- 毎回ゼロから企画を考えているため、担当者の負担が大きい
- 投稿数を増やす前に、発信の目的と問い合わせまでの流れを整理する必要がある
- その設計をもとに、日々の運用と振り返りを支援する
これなら、単に投稿作業を引き受ける提案ではなくなります。
担当者の負担が生まれている理由と、問い合わせにつながらない理由を整理し、その両方を改善する提案として説明できます。
担当者が社内で伝えたいのは、「SNSを外注したい」という希望だけではありません。
「今のやり方を続けるより、先にこの詰まりを整えた方がいい」という判断の根拠です。
提案書で、社内の会話を進められるようにする
法人向けの提案では、きれいなデザインや情報量だけで判断してもらえるわけではありません。
資料を順番に読んだ人が、「だから、この支援が必要なのか」と理解できることが大切です。
そのために、提案書には次の筋道を持たせてみてください。
| 資料で伝えること | 社内で答えられる問い |
|---|---|
| 相手の現状 | 今、何が起きているのか |
| 課題とその背景 | なぜ、その状態になっているのか |
| 放置した場合の影響 | 後回しにすると、何に困るのか |
| 解決の方向性 | 何から変えるのか |
| 支援内容と役割分担 | 誰が、何を、どこまで担うのか |
| 費用・期間・目指す状態 | 何に投資し、どう判断するのか |
この流れがあれば、支援内容は、相手の課題を解決するための選択肢として伝わります。
反対に、会社紹介、実績、サービス一覧、価格表だけが続くと、「何を頼めるのか」は分かっても、「なぜ自社が今頼む必要があるのか」まではつながりません。
担当者は、資料とは別に、社内向けの説明を組み立て直すことになります。
商談に参加していなかった人が読んでも、提案の背景が分かる。
担当者が上司から質問された時に、資料の該当箇所を示して答えられる。
そこまで想像すると、提案書に必要な情報が変わってきます。
ただし、相手の課題を、提案する側だけで決めつけないことも大切です。
現場で困っていること、今まで試したこと、目指している状態を聞き、仮説を置いて相手と確かめる。
提案書を作る前の対話があってこそ、相手の社内でも使える資料になります。
今の提案書を、担当者になったつもりで読んでみる
ここで、今使っている提案書を開いてみてください。
上司から「これ、何のために頼むの?」と聞かれた担当者になったつもりで、次の5つに答えてみます。
- 相手の会社では、今どんな場面が詰まっているのか
- その詰まりによって、誰にどんな影響が出ているのか
- 今回の提案は、何を先に整えるものなのか
- 導入後、相手側と自分側はそれぞれ何をするのか
- 何が変われば「頼んだ意味があった」と判断できるのか
自分では答えられても、その答えが資料に書かれていないことがあります。
商談中は口頭で説明していたので、伝わっているつもりになっていた。
でも、持ち帰った資料にはサービス内容しか残っていない。
このずれは、一度確認してみる価値があります。
また、答えそのものが出てこない場合は、資料の編集より前に、相手へ確認した方がいいことが残っているのかもしれません。
たとえば、「担当者は負担を減らしたいけれど、上司は何を期待しているのか分からない」という状態です。
この場合、実績のページを追加しても、社内で判断するための情報は埋まりません。
先に、会社として何を変えたいのかを確かめる必要があります。
資料を厚くする前に、説明の抜けを見つける。
そう考えると、追加すべき情報だけでなく、次の打ち合わせで聞くべきことも見えてきます。
進まない理由を確かめてから、直す場所を決める
法人の意思決定には、提案書だけでは動かせない事情もあります。
予算の時期、他の優先課題、組織変更、すでに走っている施策、社内の人手不足。
内容に納得していても、今は動けないことがあります。
だから、返事が来ない時に、すぐ値引きしたり、資料を作り直したりする必要はありません。
次に話せる機会があれば、社内ではどんな話になったのか、判断に足りない情報はあるのか、いつ頃なら検討できるのかを確かめてみてください。
そのうえで、説明する材料が足りないなら資料を補う。
優先順位が合っていないなら、提案の時期や範囲を見直す。
止まっている理由によって、次にすることは変わります。
担当者の「いいですね」を、そのまま会社の「お願いします」と受け取らない。
その間にある社内の会話まで想像して、必要な材料を渡す。
法人への提案では、このひと手間が大切です。
今の提案がどこで止まっているか整理したい方は、個別相談で、提案書と実際の商談の流れを一緒に見直してみてください。
相手にまだ聞けていないことと、資料で伝えきれていないことを分けると、次に直す場所が見えてきます。

