AIを使う仕事が増えてくると、「この作業専用のSkillを作ってみよう」と思うことはありませんか。
ここでいうSkillとは、AIに同じ仕事を任せるための手順や判断基準をひとまとまりにしたものです。
自分の仕事に合うSkillがあれば、毎回の説明や手直しを減らせそうに感じます。
ただ僕は、Skillを作ろうと思った時ほど、すぐには作り始めません。
同じ役割の仕組みが、手元や公開されている場所にすでにないかを先に調べるからです。
実際に公開Skillを探した時は、候補を10件まで並べました。
ただし、候補をランキングにすることと、全部を導入することは別です。
上位3件だけに絞り、今ある仕組みと重ならないか、必要な権限に問題がないかを確かめてから、一つずつ試しました。
作ること自体は、AIがいれば以前よりずっと速くできます。
だからこそ、すでにある解決策を知らないまま作り始めると、同じようなルールや手順を何度も増やしてしまいます。
この記事では、AIのSkillや業務フローを作る前に見ておきたい「車輪の再発明」を避ける考え方を整理します。
「車輪の再発明」とは、すでにある解決策をゼロから作り直すこと
車輪の再発明とは、すでに使える仕組みや知恵があるのに、それを調べずに同じものを最初から作り直すことです。
車輪を新しく作ることが悪いのではありません。
今の自分の仕事には合わない、足りない機能がある、扱う情報が特殊という理由があれば、新しく作る価値があります。
問題は、必要性を確かめないまま「自分用だからゼロから作る方が早い」と決めてしまうことです。
その結果、似た役割のSkillがいくつもできて、どれを使うのか自分でも迷いやすくなります。
ルールが重なれば、AIに読ませる前提も増え、直したい時に直す場所も分からなくなります。
AIを使った仕事では、作る時間だけではなく、作った後に維持する時間もかかります。
だから僕は、作業を増やす前に、今あるものを見ます。
AIは作るのが速いから、重複にも気づきにくい
以前なら、手順書や仕組みを一つ作るだけでも時間がかかりました。
時間がかかるからこそ、本当に必要かどうかを考える余地がありました。
今は「この仕事用のSkillを作って」と頼めば、たたき台がすぐに返ってきます。
便利な反面、似たものが手元にないか、公開されていないかを調べる前に、新しいファイルを増やせてしまいます。
ここで見落としやすいのは、作成コストと運用コストは別だということです。
新しいSkillを一つ増やすと、説明の重複、ルールの矛盾、更新漏れ、使い分けの迷いも一緒に増えます。
AIが速くなった分だけ、人が「何を残し、何を増やさないか」を判断する大切さは増しています。
AIとの仕事に必要な背景をどう残すかは、AIの手直しを減らす|ObsidianとCodexで仕事の背景を渡す方法でも詳しく書きました。
背景が整っていても、同じ役割の仕組みを増やし続ければ、仕事場はまた読みにくくなります。
僕が公開Skillを調べた時に、先に決めたこと
公開されている候補を見つけると、人気のものを全部入れたくなるかもしれません。
でも、導入数や評価が高いことと、自分の仕事に合うことは同じではありません。
僕が候補を10件から3件へ絞った時も、最初に決めたのは「役に立ちそうなものを集める」ことではありませんでした。
今ある仕組みと役割が重ならず、小さく試せて、合わなければ戻せるものだけを見ると決めました。
選んだ3件の役割は、公開Skillを探すこと、情報を整理して見渡すこと、不具合を推測で直さず切り分けることでした。
有名だからではなく、日々繰り返す「探す・情報を整理する・問題を切り分ける」という仕事と重なっていたから選びました。
既存のものを使う目的は、自分で考えることを省くためではありません。
すでに整理されている部分は借りて、自分の仕事にしかない判断へ時間を使うためです。
この順番なら、公開された仕組みをそのまま信じる必要もありません。
作る前に確認したい5つのこと
新しいSkillや業務フローを考えたら、次の5つを順番に見てみてください。
- 手元に同じ役割のものはないか
すでにあるメモ、手順書、Skill、ルールに、目的が近いものがないかを探します。
名前が違っても、同じ仕事を助けていることがあります。 - 公開されている候補はないか
GitHubや、公開Skillを探せるskills.shのような配布場所で、仕事の目的と近い言葉を使って探します。
ツール名だけでなく、「何を終わらせたいか」を検索語に入れると見つけやすくなります。 - 誰が配布し、今も見直されているか
配布元、説明、更新の様子を見て、何のために作られたものかを確かめます。
人気があることより、自分が扱う仕事と前提が近いことを優先します。 - 何を動かし、どこまで触れるものか
依存するツール、求める権限、実行するスクリプト、触るファイルを確認します。
便利そうでも、仕事場の大事な情報や既存の流れを不用意に変えるものは、先に入れません。 - 一件ずつ試して、戻せるか
候補をまとめて導入せず、一件だけ小さな仕事で試します。
良かった点、合わなかった点、残す判断をメモし、戻せる状態を保ったまま次へ進みます。
この5つを見た上で、それでも足りない部分がはっきりした時に、新しく作ります。
新規作成は最後の手段ではなく、必要な違いが見えた後の、いちばん精度の高い選択になります。
自分の事業に合う公開Skillを探してもらうプロンプト
「自分の場合は何を探せばいいのか」が曖昧なまま検索すると、候補の多さに疲れてしまいます。
そこで先に、事業、普段の仕事、今ある仕組み、触れてほしくない範囲をAIへ渡します。
ChatGPT、Codex、ClaudeなどWeb検索ができるAIへ貼れば、調査の出発点をそろえられます。
ただし、ここで頼むのは導入ではなく調査と提案です。
あなたは、AI業務設計と公開Skill監査の担当です。
私の事業と現在の仕事環境を理解した上で、GitHubとskills.shを現在時点で実際に調査し、相性の良い公開Skillを提案してください。
まだSkillのインストール、設定変更、ファイル編集、外部送信はしないでください。
調査と提案までにしてください。
## 私の事業と仕事
- 事業内容: [ここに記入]
- 主な顧客・商品: [ここに記入]
- 日常業務: [ここに記入]
- 現在のAI/ツール環境: [ここに記入]
- 既存Skill/ルール/手順書: [ここに記入]
- 改善したい仕事: [ここに記入]
- 触れてはいけない情報・操作: [ここに記入]
入力が足りず、正確な調査や比較ができない場合は、調査を始める前に確認質問を最大5問までしてください。
## 調査の進め方
1. 調査前に、受け取った事業内容、顧客、日常業務、改善したい仕事を3〜5行で要約してください。
その上で、今回の候補選定で重視する判断軸を示してください。
認識が外れている場合は候補調査へ進まず、私に確認してください。
2. 私の目的とタスクを起点に、複数の検索語を作ってください。
3. GitHubとskills.shを実際に調査し、候補を10件、優先順位つきでランキングしてください。
4. 各候補について、次を表で整理してください。
- 正式名
- 配布元
- URL
- 何を解決するか
- 導入すると得られること
- 私の事業に合う理由
- 導入数、GitHub stars、最終更新など、確認できた信頼性の根拠
- 依存するもの、必要な権限、実行するスクリプト
- 既存Skillやルールとの重複・衝突の可能性
- 小さく試す方法
- 合わなかった時の戻し方
5. 上位3件について、優先順位と「なぜ今この3件なのか」を詳しく説明してください。
6. Skill同士を仕事の流れとして組み合わせる案を最大3つ出してください。
各案で、組み合わせ、できること、具体的な成果物、導入順を示してください。
7. 各候補または組み合わせについて、私が「既存をそのまま使う」「一部だけ適応する」「新規作成する」のどれを選ぶべきか判定してください。
## 守ること
- 調査できない情報、確認できない数値、推測は [要確認] と書いてください。
- Skill名、数値、URLを捏造しないでください。
- Webを閲覧できない場合は、代わりに使う検索語と、私が確認する手順を返してください。
- 人気だけで推薦せず、配布元、更新、依存・権限、既存との重複、試験導入と戻し方まで確認してください。
## 出力順
1. 私の事業と改善対象についての理解
2. 候補10件の比較表
3. 上位3件と優先順位
4. 組み合わせ案
5. 次に私がすること
このプロンプトで、AIに「人気のSkillを並べる人」ではなく、自分の仕事場を見ながら候補を監査する役割を渡せます。
返ってきた10件をそのまま信じず、まず上位3件を読んで、自分が守りたい仕事の流れと照らし合わせてください。
僕が実際に使っている3つのSkill
僕が選んだ3つのSkillも、特別なことをするためではありません。
日々の仕事で繰り返している「探す・情報を整理する・問題を切り分ける」を、少しずつ速く、確かにするために使っています。
公開Skillを探すためのfind-skills
find-skillsは、新しいSkillを作る前に、すでに公開されている候補を探すためのものです。
候補を見つけた後も、配布元、導入数、GitHubの評価だけで決めず、信頼できる出どころか、自分の目的と重なるかを確かめます。
新しいものを増やす前に探す習慣があると、最初から自作する必要がある仕事だけが残ります。
Obsidianの情報を見渡すためのobsidian-bases
obsidian-basesは、Obsidianにあるノートを条件で絞り、表、カード、一覧として見渡せる状態にするためのものです。
メモが増えると、どこに何があるかだけでなく、どれが未着手で、どれを比べるべきかも見えにくくなります。
情報をただ保存するだけでなく、必要な条件で並べ直せるようにしておくと、判断に使える情報へ変わります。
推測で直さないためのdiagnosing-bugs
diagnosing-bugsは、不具合を見つけた時に、勘で直す前に再現条件と合否判定を作り、原因を絞るための手順です。
うまく動かない時ほど、いろいろな場所を一度に変えたくなります。
でも、何が起きれば失敗で、何が直れば合格かが分かっていなければ、直ったように見えて同じ問題が残ることがあります。
小さく確かめながら原因を切り分けることで、次に同じ問題が起きた時にも戻れる判断が残ります。
Skillは、自動連携ではなく仕事の流れとして組み合わせる
Skillを複数入れたからといって、それぞれが勝手に連携して仕事を終えてくれるわけではありません。
大切なのは、自分の仕事のどの順番で使うかを決めることです。
- find-skills × obsidian-bases
公開候補を探した後、導入候補、必要な権限、試験結果をObsidianで比較管理します。
次に試すものを選びやすくなり、候補を見失いにくくなります。 - obsidian-bases × diagnosing-bugs
不具合、再現条件、原因、再発防止を蓄積し、同じ問題を後から探しやすくします。
直した経験が、その場限りの対応で終わりにくくなります。 - find-skills × diagnosing-bugs
不具合への対応を新しく自作する前に、既存の診断手順を探し、手元の再現ループで合うかを確かめます。
使える型を借りつつ、自分の仕事に合うかは自分で判断できます。
組み合わせは、便利な道具を増やすためのものではありません。
次に同じ仕事をする時、どこから始めればよいかが分かる流れを残すためのものです。
10分でできる「作る前チェック」
次にAIへ「この仕事用のSkillを作って」と頼む前に、紙やメモで次の4ステップを進めてみてください。
- この仕組みで終わらせたい仕事を、一文で書く。
- その仕事を探すための検索語を、言い換えて三つ書く。
- 候補は最大3件だけ開き、配布元、更新、必要な権限、手元との重複、戻せるかを一行ずつ確認する。
- 「使う」「一部だけ適応する」「新しく作る」のどれにするかを決める。
たとえば、目的が「AIの出力を自分の文章らしく整えること」なら、検索語は「文体を整える」「既存の表現ルールを読む」「文章を校正する」のように分けられます。
最初から正しい名前を当てる必要はありません。
仕事の目的を別の言葉で見直すことで、手元にあるものや公開候補との重なりが見えます。
このワークで大切なのは、候補をたくさん集めることではありません。
今回の仕事で何を使い、何を使わないかを自分で決められる状態にすることです。
足りない部分が見えてから、新しく作る
公開Skillを使ってみると、「ここはそのまま使えるけれど、この判断だけは自分の仕事に合わない」と見えることがあります。
そこで初めて、自分用のルールを足せばいいのです。
最初から全部を自作するより、既存の型を試してから足りない部分だけを適応する方が、何を大事にしたいのかが言葉になります。
その判断を残していくと、AIへの指示も少しずつ具体的になります。
AIに仕事を任せる時は、完成条件を先に渡すことも欠かせません。
AIに仕事を任せる時は、プロンプトより完了条件を渡すを読むと、試した後に何を確認すればよいかが整理しやすくなります。
一度の導入で正解を決めるのではなく、試して、見直して、次回の判断へ残す流れを作ってください。
空いた時間を、相手との対話へ戻す
AIの仕組みを整える目的は、Skillを増やすことではありません。
調べる、比べる、繰り返しの作業を減らし、自分が本当に考えるべきことへ時間を戻すことです。
その時間で、商品の約束を見直すこともできます。
発信を読んでくれた人の言葉に返すこともできます。
相談に来てくれた相手が何に迷っているのかを、丁寧に聞くこともできます。
自分の時間の価値を上げるとは、単に空白の予定を増やすことではありません。
自分にしかできない対話へ集中できるようになり、選べる仕事と選べる生き方を増やすことだと僕は思います。
この記事では、僕が実際に使っている3つを紹介しましたが、相性の良い候補は事業や今ある環境によって変わります。
だから、公開記事で誰にでも同じSkillを一律に勧めることはしません。
自分の事業なら何を選ぶべきか、ほかに僕が実際に使っているSkillや組み合わせまで知りたい方は、個別相談ページから「Skill候補も見てほしい」とお送りください。
今ある仕事の流れと、すでに持っている仕組みを確認した上で、個別にお答えします。
話した素材をAIで整え、発信できるようになっても、その先の対話が進まなければ仕事にはつながりません。
相談で相手の本当の詰まりを一緒に見つける流れは、個別相談の成約率を上げる5つのステップ──売り込む前に整えたい相談設計で整理しています。