Noah
記事一覧へ戻る商品設計約8分で読めます

なぜコストコは、年会費を払ってまで何度も通いたくなるのか

会費を取れば、継続して売れる商品になる。
そう考えて、月額制や年額制を先に決めてしまうことがあります。

けれど、顧客から見れば会費は、商品にもう1つ支払いが増えることです。
その後も使いたい理由がなければ、会費は特典の受け取り方を複雑にするだけで終わります。

コストコは、この問いを考える材料になります。
コストコは会員制倉庫型店として、高品質な商品とサービスを可能な限り低価格で提供することを使命に掲げています。
日本の個人会員は年会費制で、家族カード1枚が含まれ、会員が満足できなければ有効期限内に年会費を全額返金する保証もあります。

ただし、会員が払っているのは入店する権利だけではありません。
商品、品揃え、買い物の体験、また来た時に選べるものがそろって、年会費以上の価値を感じられるかを毎回判断しています。

この記事で扱う発見は1つです。
会費制は会費を追加することではなく、顧客が何度も利用したくなる理由を商品と提供体験に組み込むことです。

会費を足すだけでは、会員制ビジネスにならない

月額制にすると、売上を予測しやすくなるように見えます。
提供側にとっては、単発販売よりも見通しを持ちやすいからです。

しかし顧客は、売り手の見通しのために会費を払いません。
「今月もここを使う意味があるか」を、その都度ではなく、更新前や利用のたびに判断します。

たとえば、毎月新しい動画を追加する講座を考えてみてください。
動画の本数を増やしても、受講者が自分の仕事で迷った時に見直す場所がなければ、次の月に払う理由は弱くなります。

コミュニティでも同じです。
参加資格だけを売ると、初月は新鮮でも、次に来る理由が見えなくなります。
誰と話せるのか、どんな相談を持ち込めるのか、参加後に何が前へ進むのかまで決まって初めて、継続する意味が生まれます。

会費は、顧客の行動を固定する仕組みではありません。
顧客が何度も選び直したくなる体験を、先に約束できているかを確かめるための仕組みです。

コストコの仕組みを、一枚で見る

コストコで会員が年会費を払い、会員制の倉庫店を通じて商品とサービスを受け取り、メーカー・取引先とコストコが供給と運営を支える関係を示す独自図解

図の上段には、日々の買い物をまとめたい会員を置きました。
中段には、年会費と会員資格、会員制の倉庫店、商品とサービスを並べています。
下段には、商品を供給するメーカー・取引先と、会員制の倉庫店を運営するコストコを置きました。

橙のタグは年会費のような対価です。
図の下には凡例も置きました。
青い四角は会員資格のような情報、緑の丸は会員へ届く商品やサービス、灰色の点は運営上の関係を表しています。

この図で見たいのは、年会費から会員へ直接お得が返ってくる単純な関係ではありません。
会員が払った年会費と、倉庫店で繰り返し商品を選ぶ体験は別の線です。
会員制、商品、供給、店舗運営がそろって初めて、会費を払って利用する形が成り立ちます。

コストコの公式資料では、限られた商品選定、高い販売量と在庫回転、効率的な流通、簡素な倉庫型店舗を組み合わせ、低い粗利率で運営できると説明されています。
これは、年会費だけで低価格を実現しているという意味ではありません。
年会費も含む会員制と、商品・運営の仕組みを一緒に設計していると読む方が正確です。

コストコは、何に年会費を払ってもらっているのか

コストコの日本向け公式サイトは、会員に年会費以上の価値を届けると説明しています。
そこには、国内外からの買い付け、新商品の開発、有名ブランド、コストコ限定品、海外のベストセラーなどの品揃えが含まれます。

さらに、個人会員には家族カードが1枚含まれます。
満足できない場合の年会費保証もあります。
これらは、会員になる前の不安を減らす条件です。

一方、入会時の納得だけでは、更新は続きません。
会員が次に倉庫店やオンラインへ行った時に、欲しいものがあるか、納得できる買い方ができるか、新しい発見があるかが、会費の価値を実感する場面になります。

ここで「コストコはワクワクを売っている」と一言で片づけない方がよいです。
新商品や限定品の発見は魅力の1つですが、日常に必要な食品や日用品を選べることも公式に示されています。
定番を買えることと、知らなかった商品に出会えることの両方が、次の利用理由になり得ます。

これは公式が顧客の心理を断定したものではありません。
公式が掲げる品揃えと会員制度から、会費の価値は1つの特典ではなく、繰り返す買い物の中で確かめられるものだと読めます。

何度も通いたくなる理由は、どうつくられているのか

会費制の商品を考える時、特典の数を増やしたくなります。
会員限定動画、割引、先行案内、月1回の相談枠というように、目に見える項目を並べる方法です。

特典は必要です。
ただし、それぞれが顧客のどの場面で役立つかが分からなければ、一覧を見た時だけ魅力的で、使われないまま終わります。

コストコの仕組みから見ると、問いは「何を付けるか」ではありません。
会員が生活の中でどんな買い物をするのか。
その時に、なぜこの店を選ぶのか。
次に来た時も価値を確かめられるのかです。

ひとり社長やフリーランスの仕事でも、最初に設計したいのは同じです。
顧客が次に同じ困りごとを感じるのはいつか。
その時、どんな支援があれば前へ進めるのか。
自分の商品は、そこで選ばれる形になっているかを見ます。

たとえば月額コンサルティングなら、毎月話すこと自体を商品にしないでください。
顧客が新しい施策を決める時、反応を読んで次の手を選ぶ時、価格や提案内容に迷う時に、見立てが必要になるかを確認します。
その場面に対して、相談、レビュー、優先順位づけを用意できれば、継続の理由が具体的になります。

月額の講座なら、教材を増やし続けることが答えとは限りません。
受講者が実践した後に、どこで止まりやすいかを見ます。
商品説明を書けないのか、価格を出せないのか、顧客像が定まらないのか。
止まる場所に合わせて、事例、ワーク、質問会、フィードバックを置く方が、次に開く理由をつくりやすくなります。

自分のサービスで考えるなら、「また使いたい」と思う理由からつくる

会費制の商品をつくる前に、いま売っている商品を1つ選んでください。
そして、購入した顧客がその後に困る場面を、時系列で3つ書き出します。

たとえば、発信を支援するサービスなら、次のように書けます。

購入後に起きる場面 顧客が困ること そこで渡すもの
発信テーマを決める時 自分の話が誰に役立つか分からない 顧客の悩みを整理する質問とテーマの見立て
投稿を出す直前 伝わる言葉を選べず止まる 原稿へのフィードバックと判断基準
反応を見た後 次に何を直すべきか決められない 数字と反応を読む時間、次の実験の優先順位

この表で、毎月同じものを配る必要はありません。
顧客が実際にぶつかる場面に合わせて、その時に必要なものを渡せるかが大切です。

反対に、購入後に同じ困りごとが繰り返し起きない商品もあります。
一度の制作で目的が達成するサービスや、一回の診断で判断が終わる商品まで、無理に月額制へ変える必要はありません。
顧客が必要としていないのに継続を求めると、会費は価値ではなく負担になります。

会員制を考える時は、継続期間を先に決めません。
顧客がまた助けを必要とする理由を先に言葉にして、その理由が実際に起きるかを確かめます。

会費制にする前に、確かめておきたいこと

会費制が合うかを見極めるために、次の4つを確かめてください。

  1. 顧客が繰り返し困る場面は、本当にあるか。
  2. その場面で、今の商品にはない支援が必要か。
  3. 顧客は、次に使う理由を購入前から想像できるか。
  4. 提供側は、約束した価値を無理なく続けられるか。

1つ目が曖昧なら、継続契約より単発商品や複数回パッケージの方が合うかもしれません。
2つ目が曖昧なら、今の商品説明や利用後の案内を直すだけで解決する可能性があります。

3つ目が弱い時は、会員向け特典を増やす前に、顧客がどんな時に再び助けを求めるのかを聞きます。
過去の相談、解約時の理由、利用後に届く質問を見返すと、言葉の手がかりが見つかります。

4つ目を見落とすと、顧客にとって役立つ形を作れても、提供側が疲弊します。
毎月すべてを個別対応にすると続かないなら、全員が使える判断基準は教材にし、個別の見立てが必要な部分だけを相談やレビューに残す方法があります。

会費制は、提供側の稼働を減らすためだけの設計ではありません。
顧客が必要な時に、必要な価値へ戻れるようにする約束です。
だからこそ、提供できる範囲と顧客が担うことを、購入前から言葉にしておく必要があります。

今日の1問|あなたの商品には、「またここで買いたい」と思う理由がありますか?

いま売っている商品を1つ選び、購入後に顧客が次に迷う場面を書き出してみてください。
その場面で「また使いたい」と思える価値を、特典の名前ではなく、顧客ができるようになることとして1文にします。

たとえば「月1回の相談」ではなく、「次の施策を自分で選べるようになるために、迷っている選択肢を一緒に整理する」と書きます。
この1文が書けない時は、会費を決める前に、顧客が何を繰り返し必要とするのかを見直す段階です。

自分の商品で継続して選ばれる理由をどう設計すればよいか迷う時は、個別相談で購入後の顧客の動きと、今の提供範囲を一緒に整理します。

Practice Program

この記事を実践に変えるプログラム

記事で見えた課題を、知識として読むだけで終わらせず、自分の仕事の仕組みとして実装したい方へ。

THE BOOST|学びを成果に変える6つの基礎力

自己経営価格 ¥330,000

知識を増やすだけでは、仕事は進まない。 自分で課題を見つけ、価値をつくり、伝え、改善する。 学んだことを成果につなげる6つの力を、実践で育てるプログラムです。

3レッスン総時間 4時間31分
この実践プログラムを見る

この記事をシェア

役立ちそうな方へ、記事のリンクを送れます。

コメントをする

関連記事

まだ他の記事で学びたい方は、今のテーマを一段深める記事からどうぞ。

コメント

まだコメントはありません。

ログインせずに投稿できます。投稿者名は「匿名」と表示されます。

0 / 1,000文字